遺族年金共働きだといくらもらえる?受給額の目安と2028年改正で変わること

📝 この記事でわかること
・遺族年金共働き世帯の受給額の目安と具体的なシミュレーション
・共働きならではの「もらえない」ケースと併給調整の落とし穴
・2028年改正で終身給付が5年有期に変わる影響と経過措置
・遺族年金だけでは足りないときの備え方と今すぐできる準備

「うちは共働きだから、万が一のときも遺族年金はもらえるのかな?」──そんな疑問を抱えている方は少なくありません。遺族年金は亡くなった方の年金加入状況や遺された家族の収入によって受給額が大きく変わるため、共働き世帯ほど制度のしくみを正しく理解しておく必要があります。

結論からお伝えすると、共働きであっても遺族年金は受給できます。ただし、遺された側の年収が850万円以上だと現行制度では対象外になるほか、自分自身の老齢厚生年金との併給調整で「思ったより少ない」と感じるケースが多いのが実情です。さらに2028年4月には制度が大きく改正され、終身給付だった遺族厚生年金が原則5年間の有期給付に変わります。

この記事では、遺族年金共働き世帯の受給条件・金額のシミュレーションから2028年改正の影響、そして今からできる備えまでを丁寧に解説します。ご夫婦で老後の安心を考えるきっかけにしていただければ幸いです。

目次

遺族年金共働き世帯がまず知っておきたい制度の基本

遺族年金には「基礎」と「厚生」の2階建て構造がある

遺族年金は大きく「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類に分かれています。遺族基礎年金は国民年金に加入していた方が亡くなった場合に、18歳年度末までの子どもがいる配偶者または子どもに支給されます。2026年度の支給額は月額約7万608円(年額約81万6,000円)に子の加算が付く形です。

一方、遺族厚生年金は厚生年金に加入していた方(会社員・公務員)が亡くなった場合に支給されます。金額は亡くなった方の厚生年金の報酬比例部分の4分の3で計算されるため、現役時代の収入が高いほど受給額も多くなります。共働き世帯ではどちらも厚生年金に加入しているケースが多いので、「どちらが先に亡くなるか」で受給できる年金の種類や金額が変わってくる点を押さえておきましょう。

なお、遺族基礎年金は「子どものいる配偶者」が対象なので、子どもが全員18歳年度末を過ぎると支給が終了します。一方、遺族厚生年金は現行制度では子どもの有無にかかわらず、要件を満たせば終身で受け取れます(2028年改正後は変更あり)。

共働き世帯の受給条件──年収850万円の壁とは

遺族年金を受給するには「生計維持関係」の要件を満たす必要があります。具体的には、亡くなった方と生計を同じくしており、かつ遺された側の前年の年収が850万円未満(または所得655万5,000円未満)であることが条件です。

共働き世帯で注意したいのは、この年収制限は「恒常的な収入」で判定されるという点です。一時的なボーナスや退職金は含まれませんが、給与収入が年間850万円を超えていると遺族年金の受給資格がありません。ただし、おおむね5年以内に850万円未満になる見込みがあれば認められるケースもあります。

実際のところ、年収850万円以上の方は全体の約5%程度とされていますので、多くの共働き世帯はこの要件をクリアできます。ただし、近年は管理職の女性や専門職で850万円を超える方も増えていますので、「自分は大丈夫」と思い込まずに確認しておくことが大切です。

遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給条件を整理する

2つの遺族年金の受給条件を整理すると、まず遺族基礎年金は「18歳年度末までの子がいること」が絶対条件です。子なし夫婦の場合、どちらが亡くなっても遺族基礎年金は受け取れません。

遺族厚生年金の受給条件は、亡くなった方が①厚生年金加入中に死亡、②加入中の傷病が原因で初診日から5年以内に死亡、③障害厚生年金1級・2級の受給者が死亡、④老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある方が死亡──のいずれかに該当することです。会社員や公務員として働いている方が亡くなった場合は、ほとんどのケースで①に該当します。

注意点として、現行制度では夫が亡くなった場合の妻への遺族厚生年金は年齢制限なく受給できますが、妻が亡くなった場合の夫への支給は「夫が55歳以上」という条件があり、実際の支給開始は60歳からです。この男女差は2028年改正で解消される予定ですが、現時点では依然として残っています。

共働きだからこそ知っておきたい「中高齢寡婦加算」

遺族厚生年金には「中高齢寡婦加算」という上乗せ制度があります。これは夫が亡くなったときに妻が40歳以上65歳未満で、18歳年度末までの子がいない場合(または子が年齢を超えて遺族基礎年金を受けられなくなった場合)に、年額約61万2,000円(2026年度)が加算される制度です。

共働き世帯でも、妻の年齢が40歳以上で子がいない、あるいは子が独立済みであれば、この加算を受けられます。月額に直すと約5万1,000円の上乗せですから、遺族厚生年金と合わせるとまとまった金額になります。

ただし、この加算は65歳になると終了し、代わりに自分の老齢基礎年金が支給されます。また、2028年の改正以降に新たに受給権が発生する方には、中高齢寡婦加算に代わる「有期給付加算」が設けられる予定です。制度の切り替え時期にあたる方は、自分がどちらの制度の対象になるのか確認しておきましょう。

遺族年金共働き世帯の受給額を具体的にシミュレーション

夫が亡くなった場合──妻と子ども2人のケース

共働き世帯の典型例として、夫の平均標準報酬額が月額40万円(年収約600万円相当)、厚生年金加入期間25年のケースで計算してみましょう。子どもが2人(ともに18歳未満)いる場合、遺族基礎年金は年額約81万6,000円+子の加算(1人目・2人目各約23万4,800円)で合計約128万5,600円です。

遺族厚生年金は報酬比例部分の4分の3で計算します。平均標準報酬額40万円・加入25年の場合、報酬比例部分は約66万円となり、その4分の3で約49万5,000円です。ただし、加入期間が300月(25年)未満の場合は300月とみなす「最低保障」があるため、若くして亡くなった場合でもある程度の金額が確保されます。

合計すると年額約178万円、月額に直すと約14万8,000円です。妻自身の給与収入と合わせれば生活は維持できる水準ですが、住宅ローンの返済や教育費を考えると決して余裕があるとは言えません。子どもが18歳年度末を過ぎると遺族基礎年金がなくなり、年額約49万5,000円(月額約4万1,000円)まで大幅に減る点にも注意が必要です。

妻が亡くなった場合──夫の受給額が少ない理由

現行制度では、妻が亡くなった場合の夫への遺族厚生年金は条件が厳しく設定されています。18歳年度末までの子がいれば遺族基礎年金は受給できますが、遺族厚生年金は夫が55歳以上でないと受給権が発生しません(支給開始は60歳から)。

たとえば、妻の平均標準報酬額が月額30万円・加入20年のケースでは、遺族厚生年金は年額約37万円(月額約3万1,000円)と計算されます。しかし、夫が55歳未満であれば、この遺族厚生年金自体が受け取れません。子がいれば遺族基礎年金は受給できますが、子が18歳を過ぎれば何も残らないことになります。

この男女差は「かつては夫が主な稼ぎ手」という前提で設計された名残で、共働きが当たり前になった現在では不公平だという指摘が長年ありました。2028年改正ではこの男女差が解消され、夫も年齢制限なく遺族厚生年金を受給できるようになります。ただし、新制度では5年の有期給付が原則となるため、「受給しやすくなったが、期間は短くなった」というのが実態です。

📊 みまもりノート調べ:共働き世帯の遺族年金 受給額の目安(2026年度)

ケース 遺族基礎年金(年額) 遺族厚生年金(年額) 合計(月額換算)
夫死亡・子2人
(夫の年収600万円)
約128.6万円 約49.5万円 約14.8万円
夫死亡・子なし
(妻40歳以上)
なし 約49.5万円
+中高齢寡婦加算約61.2万円
約9.2万円
妻死亡・子2人
(妻の年収450万円)
約128.6万円 約37万円
(夫55歳以上の場合)
約13.8万円
妻死亡・子なし
(夫55歳未満)
なし 受給不可 0円

※夫の平均標準報酬額40万円・加入25年、妻の平均標準報酬額30万円・加入20年として試算。子の加算は2人分で計算。

子どもの有無と年齢で受給額がこれだけ変わる

遺族年金の受給額は、子どもの有無と年齢によって大きく変動します。18歳年度末までの子どもが2人いる場合は遺族基礎年金だけで年額約128万6,000円ですが、子どもが1人になると約105万1,000円、子どもが全員18歳を過ぎると遺族基礎年金は0円になります。

共働き世帯にとって特に影響が大きいのは、末子が18歳年度末を迎えるタイミングです。それまで月額10万円以上あった遺族年金が、一気に遺族厚生年金のみ(月額4〜5万円程度)に減ってしまいます。教育費のピークが過ぎている時期とはいえ、生活設計の見直しが必要になります。

意外と知られていないのが、子どもに障害がある場合の取り扱いです。障害等級1級・2級に該当する子どもがいる場合は、20歳まで遺族基礎年金の対象になります。また、孫についても一定の要件を満たせば遺族基礎年金の対象になりますが、実際に孫が受給するケースは限られます。

共働きの片方がパート・契約社員の場合の注意点

「共働き」といっても、片方がパートや契約社員で厚生年金に加入していないケースもあります。2024年10月から従業員51人以上の企業で週20時間以上・月額賃金8万8,000円以上のパート労働者も厚生年金の適用対象になりましたが、それ以前から短時間で働いていた方や小規模企業の方は国民年金のみの場合があります。

夫が厚生年金加入者で妻が国民年金のみの場合、夫が亡くなれば妻は遺族厚生年金を受給できます。しかし逆に、国民年金のみの妻が亡くなった場合、夫は遺族厚生年金を受け取れません(遺族基礎年金は子がいれば可能)。

パートから正社員に転換したり、厚生年金の適用が拡大されたりして加入期間が短い場合は、遺族厚生年金の額も少なくなります。ねんきん定期便で自分の加入状況を確認し、「万が一のとき家族がいくら受け取れるか」を把握しておきましょう。

遺族年金共働きでも「もらえない」意外なケースに注意

離婚後に元配偶者が亡くなっても遺族年金は受け取れない

遺族年金は「生計維持関係」があった配偶者に支給されるため、離婚した元配偶者には受給権がありません。たとえ長年連れ添い、相手の年金保険料を支えていたとしても、離婚した時点で遺族年金の対象からは外れます。

離婚後に養育している子どもがいれば、その子ども自身が遺族基礎年金や遺族厚生年金を受給できる可能性があります。ただし、子どもが受給する場合は配偶者に支給されるよりも加算が少なく、金額は限定的です。

離婚を検討している場合は「年金分割制度」を利用することで、婚姻期間中の厚生年金記録を分割できます。合意分割は按分割合を話し合いで決め、3号分割は2008年4月以降の記録を自動的に2分の1に分割できます。離婚から2年以内に手続きが必要なので、忘れずに対応しましょう。

⚠️ 気をつけたいこと
離婚後の年金分割は「離婚から2年以内」が期限です。この期限を過ぎると原則として手続きができなくなります。離婚の際は財産分与とあわせて年金分割も忘れずに手続きしましょう。なお、年金分割で分割されるのは「厚生年金の記録」であり、遺族年金の受給権とは別の制度です。

事実婚・別居中でも遺族年金は受給できるのか

法律婚ではない事実婚(内縁関係)であっても、遺族年金は受給できます。年金法上の「配偶者」には事実婚の相手も含まれるためです。ただし、事実婚を証明するための書類(住民票の続柄欄に「妻(未届)」の記載、連名の郵便物、光熱費の請求書など)が必要で、審査は法律婚より厳しくなります。

別居中の夫婦については、生計維持関係が認められるかどうかがポイントです。仕送りをしている、健康保険の扶養に入っているなど、経済的なつながりがあれば認められることが多いです。逆に、長期間にわたり経済的な援助もなく、事実上婚姻関係が破綻していると判断されれば、法律上は婚姻中であっても受給できない場合があります。

同性パートナーについては、現時点では遺族年金の対象とは認められていません。自治体のパートナーシップ証明書があっても、年金法上は「配偶者」に含まれないのが現状です。この点は今後の制度改正に注目が集まっています。

子なし共働き夫婦が直面する「給付ゼロ」のリスク

子どものいない共働き夫婦の場合、現行制度で特にリスクが大きいのは「妻が亡くなり、夫が55歳未満」のケースです。この場合、遺族基礎年金は子がいないため受給不可、遺族厚生年金も年齢要件を満たさず受給不可となり、遺族年金は文字通りゼロになります。

40代で妻を亡くした夫が、住宅ローンの返済を抱えながら遺族年金をまったく受け取れない──これは共働き世帯にとって深刻な問題です。妻の収入で生活費の半分を賄っていた家庭では、生活が一変してしまいます。

2028年改正後は夫の年齢制限が撤廃されるため、この「給付ゼロ」問題は解消されます。ただし、新制度の遺族厚生年金は原則5年間の有期給付です。30代・40代で配偶者を亡くした場合、5年後に給付が終了した後の生活設計が新たな課題になります。それまでの間に民間の保険や貯蓄で備えておく必要があるでしょう。

2028年改正で遺族年金共働き世帯はどう変わる?

終身給付から5年有期給付へ──最大の変更点を理解する

2025年6月に成立した年金制度改革法により、2028年4月から遺族厚生年金の給付体系が大きく変わります。現行制度では子のない配偶者への遺族厚生年金は原則終身給付ですが、新制度では原則「5年間の有期給付」に切り替わります。

有期給付の金額は、現行の遺族厚生年金に「有期給付加算」が上乗せされ、現在の約1.3倍の水準になります。つまり、月額4万円だった方は月額約5万2,000円になるイメージです。5年間の総額で見ると、現行の終身給付よりも短期的には多く受け取れますが、長期的には総受給額が減少する可能性があります。

ただし、すべての方が5年で打ち切られるわけではありません。5年経過後に一定の要件(月額収入約10万円以下など)を満たせば、延長して受給できる経過措置が設けられています。共働きで自身の収入がある方は、この延長要件に該当しない可能性が高い点に注意が必要です。

現行制度(〜2028年3月) 新制度(2028年4月〜)
子のない妻への給付は終身
男女で受給条件に差がある
年収850万円未満の収入制限あり
中高齢寡婦加算あり(40〜64歳の妻)
原則5年間の有期給付(約1.3倍の額)
男女の受給条件が統一
収入制限を撤廃(5年後の延長には新基準)
有期給付加算に変更

男女差の解消で夫も遺族厚生年金を受給しやすくなる

新制度の大きなポイントの一つが、男女差の解消です。現行制度では、妻が亡くなった場合に夫が遺族厚生年金を受け取るには「55歳以上」という年齢制限がありましたが、新制度ではこの制限が撤廃されます。

共働き世帯にとって、これは大きな改善です。妻の収入に頼っている部分がある家庭、あるいは妻のほうが収入が高い家庭では、妻に万が一があった場合の経済的ダメージは深刻です。新制度では夫が何歳であっても5年間の有期給付を受けられるようになるため、立て直しの期間を確保できます。

ただし、2028年4月の施行時点で段階的に適用される点に注意してください。施行直後に新制度の有期給付の対象となるのは、子のいない60歳未満の夫です。それ以外の方は経過措置の対象となり、従来のルールが一定期間適用されます。自分がどの区分に入るかは、施行日時点の年齢と家族構成で決まります。

収入制限の撤廃と新たに設けられる基準

現行制度の「年収850万円未満」という収入制限は、新制度で撤廃されます。つまり、年収が850万円以上であっても、配偶者が亡くなれば5年間の有期給付を受け取れるようになります。高収入の共働き世帯にとってはプラスの変更です。

しかし、5年間の有期給付が終了した後に給付を継続する場合は、新たな収入基準が設けられます。具体的には月額収入が約10万円以下であることが条件です。共働きで自身の収入がある方は、この基準をクリアするのは難しいでしょう。

結果として、共働き世帯にとっての新制度は「入口は広くなったが、長期的な給付は限定的」という性格になります。年収850万円以上でも5年間は受け取れる一方、5年後の継続は自身の収入次第です。共働きで一定の収入がある方は「5年間のつなぎ給付」と割り切り、その間に生活を立て直す計画を立てておくことが現実的です。

経過措置の対象になる人・ならない人の見分け方

2028年改正には経過措置が設けられており、すべての人がいきなり新制度に移行するわけではありません。施行日(2028年4月1日)時点の年齢と家族構成によって、適用されるルールが異なります。

女性の場合、施行時点で40歳以上の方は従来どおりの終身給付ルールが適用されます。原則5年間の有期給付の対象となるのは、2028年末時点で40歳未満で18歳年度末までの子がいない方です。つまり、1988年(昭和63年)以降に生まれた子のない女性が新制度の対象になります。

男性の場合は、新たに5年間の有期給付を受けられるようになるのは18歳年度末までの子がいない60歳未満の方です。これまで受給権すらなかった55歳未満の男性にとっては、有期とはいえ受給できること自体が前進です。

現在すでに遺族厚生年金を受給している方には、新制度は適用されません。受給中の方は引き続き現行のルールで給付が続きますので、ご安心ください。自分がどの区分に当てはまるか不安な場合は、最寄りの年金事務所で確認できます。

遺族年金共働き世帯が見落としがちな3つの落とし穴

自分の老齢厚生年金との「併給調整」で受給額が減る

共働き世帯が最も見落としやすいのが、65歳以降の「併給調整」です。65歳になると自分自身の老齢厚生年金の受給が始まりますが、遺族厚生年金と老齢厚生年金の両方を全額受け取ることはできません。

具体的には、まず自分の老齢厚生年金が優先して支給され、遺族厚生年金は「遺族厚生年金の額から自分の老齢厚生年金の額を差し引いた差額」だけが支給されます。たとえば、遺族厚生年金が年額50万円、自分の老齢厚生年金が年額45万円の場合、遺族厚生年金として受け取れるのは差額の5万円だけです。

共働きで長年厚生年金に加入してきた方は、自身の老齢厚生年金の額が大きくなるため、遺族厚生年金の差額がほとんどゼロになるケースも珍しくありません。「遺族年金があるから老後は安心」と思っていたのに、65歳になったらほぼ受け取れなかった──これは共働き世帯に多い誤算です。

💡 暮らしの知恵
併給調整で損をしないためには、ねんきん定期便で自分の老齢厚生年金の見込額を確認しておくことが大切です。「遺族厚生年金の額−自分の老齢厚生年金の額」がプラスにならないと、遺族厚生年金からの上乗せはありません。共働きで厚生年金の加入歴が長い方ほど、遺族年金に頼れる額は少なくなる傾向があります。

遺族年金は非課税だが社会保険料や医療費負担に影響する

遺族年金は所得税・住民税がかからない非課税所得です。確定申告の所得にも算入されません。しかし、「非課税だから何も影響しない」と思い込むのは早計です。

まず、国民健康保険料の計算においては、遺族年金は所得に含まれません。しかし、配偶者の死亡によって世帯の所得構成が変わると、保険料の軽減判定に影響することがあります。また、介護保険料の段階判定でも、遺族年金自体は所得に含まれませんが、世帯構成の変化で負担段階が変わることがあります。

医療費の自己負担割合(70歳以上の場合)も、世帯の所得状況で判定されます。配偶者を亡くして世帯の収入が変わると、自己負担割合が変更になる可能性があります。また、遺族年金を受給しながらパートで働く場合、パート収入は通常どおり課税されますので、確定申告が必要になるケースもあります。

勤務先の遺族向け制度を確認していないと損をすることがある

公的な遺族年金に加えて、勤務先の企業が独自の遺族保障制度を持っている場合があります。企業年金(確定給付年金や確定拠出年金)の遺族給付、弔慰金、団体生命保険、互助会の給付などが代表的です。

特に見落としがちなのが、確定拠出年金(企業型DC)の死亡一時金です。加入者が亡くなった場合、積み立てた資産は遺族に死亡一時金として支給されます。請求期限は5年間(2021年の法改正で10年に延長されたケースもあり)ですが、存在自体を知らなければ請求できません。

また、共済組合に加入している公務員の場合は、遺族共済年金の制度が適用されます。2015年の一元化以降は遺族厚生年金に統合されていますが、一元化前の加入期間がある方は経過措置の対象になる場合があります。勤務先の人事・総務部門に「万が一の場合にどんな保障があるか」を事前に確認しておくと安心です。

遺族年金だけでは足りない?共働き世帯の賢い備え方

遺族年金と生命保険の「二重取り」は問題ないのか

遺族年金と民間の生命保険は別の制度ですので、両方受け取っても「二重取り」にはなりません。遺族年金を受給していても生命保険金は全額受け取れますし、逆に生命保険金を受け取ったからといって遺族年金が減額されることもありません。

共働き世帯が生命保険を見直す際のポイントは、「遺族年金で足りない部分だけを民間保険でカバーする」という考え方です。たとえば、夫が亡くなった場合に遺族年金で月額15万円が見込めるなら、残りの生活費との差額(月額5〜10万円程度)を保険で補えばよいわけです。

2028年改正後は遺族厚生年金が5年有期になるため、6年目以降の保障を手厚くする必要があります。収入保障保険(毎月一定額が給付される保険)は遺族年金の補完に適しており、保険期間を「末子の独立」や「自身の65歳」に合わせて設定すると無駄がありません。

✅ 保険見直しのステップ

  1. Step1: ねんきん定期便で遺族年金の見込額を確認する
  2. Step2: 万が一の場合の毎月の生活費を算出する(住宅ローン・教育費・生活費)
  3. Step3: 遺族年金との差額分を民間保険でカバーする保険設計を行う

iDeCo・企業型DCの積立金は遺族に引き継げるのか

iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型DC(確定拠出年金)の加入者が亡くなった場合、積み立てた資産は「死亡一時金」として遺族に支給されます。年金として分割受給することはできず、一括での受け取りとなります。

受取人は、加入時に指定した方がいればその方、指定がなければ法律で定められた順位に従います。配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順です。請求期限は原則5年以内(iDeCoは2021年の改正で10年に延長)ですので、早めに手続きしましょう。

注意すべきは税金の取り扱いです。死亡一時金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。ただし、法定相続人1人あたり500万円の非課税枠がありますので、生命保険金の非課税枠と合わせて計算する必要があります。iDeCoの残高が大きい方は、相続税への影響も考慮して資産全体のバランスを確認しておくとよいでしょう。

住宅ローンの団信があれば遺族年金と合わせて安心できるか

住宅ローンを組んでいる方の多くは、団体信用生命保険(団信)に加入しています。団信はローン契約者が亡くなった場合にローン残高がゼロになる保険で、遺族は住宅ローンの返済から解放されます。

共働き世帯の場合、住宅ローンの名義がどちらか一方なのか、ペアローンなのかによって状況が変わります。ペアローンの場合、一方が亡くなるとその方の分のローンは団信でゼロになりますが、遺された側の分のローンは残ります。「ペアローンなら半分は残る」ことを前提に、遺族年金と合わせた返済計画を考えておく必要があります。

団信でローンがなくなると、毎月のローン返済分(たとえば月額8〜12万円)がまるまる浮くことになります。遺族年金と合わせれば、住居費の心配がなくなる分、生活の安定度はかなり高くなります。ただし、マンションの場合は管理費・修繕積立金(月額2〜4万円程度)は引き続き発生しますし、固定資産税の支払いも残りますので、住居費がゼロになるわけではない点は忘れないようにしましょう。

遺族年金共働き世帯が今すぐやるべき3つの準備

ねんきん定期便で「万が一の受給額」を夫婦それぞれ確認する

まず取り組んでいただきたいのが、ねんきん定期便の確認です。毎年誕生月に届くねんきん定期便には、これまでの年金加入記録と将来の年金見込額が記載されています。50歳以上の方には「このまま60歳まで加入した場合の見込額」が記載されますので、より正確な数字を把握できます。

ねんきん定期便に記載されている「報酬比例部分」の金額をもとに、遺族厚生年金の概算額を計算できます。報酬比例部分の4分の3が遺族厚生年金の額です。たとえば報酬比例部分が年額80万円と記載されていれば、遺族厚生年金は年額60万円(月額5万円)が目安です。

ねんきん定期便が手元にない方は、日本年金機構の「ねんきんネット」でいつでも確認できます。マイナンバーカードがあればマイナポータル経由でログインでき、年金記録の照会や将来の受給額シミュレーションが可能です。夫婦それぞれの情報を確認し、「どちらが先に亡くなった場合にいくら受け取れるか」を具体的な数字で共有しておきましょう。

✅ 遺族年金の備えチェックリスト

  • ☐ ねんきん定期便で夫婦それぞれの報酬比例部分を確認した
  • ☐ 遺族厚生年金の概算額(報酬比例部分×3/4)を計算した
  • ☐ 万が一の場合の毎月の必要生活費を算出した
  • ☐ 遺族年金と必要生活費の差額を確認した
  • ☐ 差額を補う方法(保険・貯蓄)を検討した
  • ☐ 勤務先の遺族保障制度(企業年金・弔慰金等)を確認した

万が一のシミュレーションを夫婦でオープンに話し合う

「万が一のこと」は話しにくいテーマですが、共働き世帯こそ夫婦で情報を共有しておくことが大切です。特に確認しておきたいのは、①遺族年金の見込額、②生命保険の保障内容と受取人、③住宅ローンの名義と団信の有無、④預貯金・投資の口座情報──の4点です。

「自分に万が一があったら、相手は月々いくらで生活することになるのか」を具体的に計算してみると、意外な過不足が見えてきます。遺族年金だけでは足りないことが判明すれば、保険の見直しや貯蓄の積み増しを早めに始められます。逆に、保障が十分であれば保険料を削減する判断もできます。

話し合いのタイミングは、保険の更新時期や住宅ローンの借り換え時、子どもの進学時など、お金のことを考える機会に合わせると自然です。「縁起でもない」と避けるのではなく、「お互いが安心して暮らすための確認作業」と捉えて、定期的に見直していきましょう。

専門家への相談が必要になるケースを知っておく

遺族年金の制度は複雑で、個々の状況によって受給額や受給条件が大きく異なります。以下のようなケースに該当する方は、社会保険労務士やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することをお勧めします。

まず、離婚歴がある方です。前婚で子どもがいる場合、遺族年金の受給権者が誰になるかは複雑な判断が必要です。再婚している場合は、前妻の子と再婚後の配偶者の間で受給順位が問題になることもあります。

次に、自営業と会社員の兼業をしている方、あるいは転職が多く年金加入歴が複雑な方です。厚生年金と国民年金の切り替えが多いと、遺族厚生年金の計算が複雑になります。年金記録に「もれ」や「誤り」がないかの確認も兼ねて、年金事務所での相談をお勧めします。

また、2028年改正の影響を具体的に知りたい方も、専門家への相談が有効です。経過措置の適用範囲は個人の年齢・家族構成・収入によって異なるため、一般的な情報だけでは判断が難しいケースがあります。年金事務所での相談は無料ですので、気軽に活用してみてください。

まとめ──遺族年金共働き世帯が安心して暮らすために

遺族年金共働き世帯にとって最も大切なのは、「自分たちの場合はいくらもらえるのか」を具体的に把握しておくことです。共働きだから安心とも、共働きだから不利とも一概には言えません。夫婦それぞれの加入状況、子どもの有無、年齢、収入によって受給額は大きく変わります。

2028年4月の制度改正では、男女差の解消や収入制限の撤廃といったプラスの変更がある一方で、終身給付から5年有期給付への移行という大きな転換もあります。特に共働きで自身の収入がある方は、5年後の延長要件を満たしにくいため、「5年間のつなぎ給付」として捉えた上での備えが必要です。

この記事の要点を整理します。

  • 遺族年金は共働きでも受給可能。ただし年収850万円以上は現行制度では対象外(2028年改正で撤廃)
  • 遺族基礎年金は18歳年度末までの子がいる場合のみ。子なし夫婦は遺族厚生年金のみ
  • 現行制度では妻が亡くなった場合の夫への遺族厚生年金は55歳以上の年齢制限あり(2028年改正で撤廃)
  • 65歳以降は自分の老齢厚生年金との併給調整で、遺族厚生年金の実質受給額が減少する
  • 2028年改正で遺族厚生年金は原則5年間の有期給付に。金額は約1.3倍になるが終身ではなくなる
  • 遺族年金だけでは不足する分は、生命保険・iDeCo死亡一時金・団信などと組み合わせて備える
  • ねんきん定期便で夫婦それぞれの報酬比例部分を確認し、万が一の受給額を把握しておく

最初の一歩として、まずはねんきん定期便を引き出しから出して(またはねんきんネットにログインして)、夫婦それぞれの報酬比例部分の金額を確認してみてください。その数字を4分の3にすれば、遺族厚生年金のおおよその額がわかります。「知っているだけで安心できる」──遺族年金の備えは、まさにそこから始まります。

※年金制度の詳細や個別の受給額については、最寄りの年金事務所または社会保険労務士にご相談ください。

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「みまもりノート」運営者。孫のお祝い事や冠婚葬祭のマナー、定年後の暮らしなど、人生の節目で気になることを調べてまとめています。同世代の方が「これで安心」と思える情報をお届けしたいと思っています。

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